トップページ
トップページちょっと余談(9)ナナカマドの実は腐りにくいぞ
(1)ヤマボウシ実生(2)気になる木 シラカバ(3)パームツリーが街路樹(4)街路樹編#1 落葉の問題(5)街路樹編#2 植栽間隔(6)街路樹編#3 温室効果ガス(7)街路樹編#4 生存競争(8)ナナカマド 実がならないよ(9)ナナカマドの実は腐りにくいぞ(10)えひめAIを作ってみました(11)姉妹都市(12)アシボソアミガサダケが発生しました
(9)ナナカマドの実は腐りにくいぞ
 前回に続いてナナカマドの実についてちょっと話をしてみたいと思います。
 前回ナナカマドの実は、落葉後、雪をかぶっても実を付けているという話をしました。このように、いつまでも実を付けて腐りにくい事に注目したフランス人が実を調べたところ、ソルビン酸という成分が作用している事を発見しました。このソルビン酸は、殺菌効果が強くカビや細菌の増殖を抑える働きがあるのです。現在かまぼこやハムなどいろいろな食品に保存料として利用されているみたいです。

 でも一部の間では、ソルビン酸がよろしくないのではと言う意見もあります。
 食品衛生法や保存料や添加物等の事は良く分からないが、樹木の立場から考えてみましょう。ナナカマドは、秋から翌春まで長い期間実を付けています。それは、長い期間鳥たちに食べてもらう事により広い範囲にたくさんの種を散布してもらおうと考えたのでしょう。そのため腐って地面に落ちてしまわないように、体内でソルビン酸を生成したのではないかと考えます。また、秋や初冬に実を食べられ散布されるより春先の条件の良い時に鳥たちに散布してもらう方が発芽しやすいので長い期間実を付けているのかもしれません。いずれにせよ移動できない樹木にとっては、いかに広範囲に種をまくか、いかに多くの自分の子孫を残すかを考えているのです。
 そのための、自分の子孫を残すためにソルビン酸の生成を行ったのではと考えられます。

 このように自然界では自分の子孫を守るため。また、ストレス(害虫や細菌)から自分自身を守るために植物(樹木)は防御物質(ファイトアレキシン)を作ると言われています。

葉が開いた後、一斉に群がるオビカレハの幼虫(茶色く見える部分)
 上の写真を見てください。毎年よく見る光景なのですが、春先のこれから光合成を行って栄養を作るぞと葉を開いたやさき、害虫が一気に発生し葉が食われる事があります。この時の樹木が受けるストレスは、すごいもので木が怒りで震えているように見えます。そして、葉が食いつくされると樹木は、再度、新葉を再生します。2度目の葉は、経験上害虫がつきにくいように何らかの対策を講じて新葉を出すようです。
 樹木にとって害虫・細菌の攻撃を受ける事は樹勢の衰えとなり、余分な栄養を使わなければならないため、今度は食べられないように防御物質を葉等に生成し対抗するのでしょう。
 このように樹木が短時間で大きなストレスを感じる時、私は殺虫剤を散布しても良いと考えます。農薬散布で大切なことは指定された農薬を規定倍数で規定量飛散のないように注意して散布することです。特に農薬を養護するわけでないのですが注意して使用する分には問題ないと考えますし、樹木へのストレス軽減になると思います。
 この頃の世間での風潮では、無農薬が良くて虫がついた時はそのままにしておくか、または、害虫は直接、人が木に登って払った方が良いとされていますが、私がこの写真の状態を見る限りこの木に登りたいとも思いませんし、まして他人に登って手で虫を払いなさいとは言えません。

 話をまとめましょう。ナナカマドの実から農薬や化学物質の話になりましたが……

【1】 植物、樹木は自分の子孫繁栄のため、害虫などからストレスを受けた時など自分を守るため何らかの防御物質を生成する。人間の免疫システムみたいなものと考えて良いと思います。

【2】 前にある講演会で無農薬、無肥料で栽培したものは腐りにくいという話を聞きました。つまり農薬や肥料で保護されないために植物、樹木自体が自己防衛のために何らかの防御物質を体内に生成する事により腐りにくく害虫の被害も受けにくくなるのでは? (私なりの推論)

防虫菊(シロバナムシヨケギク)

シキミ
【3】 人間が作った農薬や肥料は人に悪影響を与えると問題視されるが、植物や樹木などがおのずから生成する防御物質は人間に悪影響を与える事はないのか?

【4】 保存料に使用されるソルビン酸ナナカマドの実から、ピレスロイド系殺虫剤は除虫菊から、インフルエンザの薬タミフルは仏事に利用されるシキミから、その他、ジキタリストリカブトケシ等々数えればきりがない薬が植物・樹木から作られている。これらは、自然界で植物・樹木たちが生きていくために必要で生成しているのであって、それらを利用させてもらっている人間が勝手に毒だ、薬だと言い、「良い・悪い」を判断しているのでは?

ジキタリス

トリカブト
【5】 自然界が作るものはすべて良いもの、それを化学的に合成したら悪いものになる。その考えが本当に正しいのなら、私はもう薬も飲む事ができないし、食べるものもなくなると思います。化学物質や農薬を大量に使えと言っているのではないのです。自然のサイクルの中で若干の使用ならよいのではと考えますし。また、これらは自然界をお手本に作られたものが多い。(こんな事を書くと無農薬、無施肥で農業をしている方に怒られそうですが)

【6】 自然の中で生育されストレスと戦い、無農薬、無肥料で栽培された作物の味は、農薬や肥料を与えて作られたものより味が良く良質のものであるのか?(食べ比べた事がないのでわからない)

【7】 私の子供のころは、ごく一部に卵・鶏肉や牛乳に対してアレルギーのある子供がいて「僕は、卵アレルギーなんだ」と給食の時間説明を受けると、アレルギー体質の子供が少なかった時代なので「アレルギーって、何かカッコいいな」と思うぐらいでした。
 最近は○○アレルギーに悩む人が多いが、化学物質が原因でアレルギーが出ているのでしょうか。化学物質が直接の原因というより、スギ・シラカバ等の花粉や、トマト、キウイ等の野菜や果物、ソバ、小麦等の穀物、ペット等の動物の毛等のアレルギーが多いように思います。(私の周りで○○アレルギーで悩む人たちを見る限り)

 ナナカマドの実から難しい話になってしまいましたが、あなたならどう思いますか?
 ・自然で天然由来のものは良いか悪いか
 ・化学合成されたものは良いか悪いか
 ・薬は使用するかしないか
 ・農薬を使用したものを食べるか食べないか
 何を選ぶとしても絶対とは言い切れないと思います。
 結局、自分でその時その時を判断して選んでいくしかないのです。

 私の子供の頃、舌に色がつくほどの合成着色料が入ったオレンジジュースを飲んでいました。今もあの頃に飲んだジュースが一番うまかったような気がします。
 そして皆で舌を見せやって遊びました。
 きっと化学の力で作り上げたジュースだったと思います。
 大変申し訳ないのですが、今の100%のオレンジジュースは飲みにくいです。無果汁か果汁30%ぐらいの方が飲みやすいと思うのは私だけでしょうか。
 お酒だって適量なら薬、飲みすぎたら毒となります。
 何をするにも塩梅が大事なのでは……